リアルワインガイド創刊号(2002年9月)
圧倒的に消費者視点で、それはいまも全くブレていない。創刊号の冒頭、編集長である徳丸さんによる所信表明ともいえる部分に記されている。
「リアルワインガイドは、産地や品種、ワインの造り方といった不変の情報や初歩的な内容は扱っていない。また、とあるミクロクリマのことや、とある造り手の栄光盛衰を詳細に綴った、ディープなものでもない。それらは既存の数多ある秀逸な出版物を参照いただければと考える。この本にあるものは送り手の視点とは異なる。受け手側の、つまり私達消費者の視点によるワイン情報である。」
「問題の本質は「本に載っていれば売りやすい、売れる」とも正直に答えてくれたその主人の言葉どおりの業界内の図式だ。ある働きかけが存在して情報の中立性を保つべきジャーナリズムとはほど遠い世界が蔓延している。それとは無関係にたくさんの優良な酒販店がある。ワインを大切にしている、本誌がしつこく言う「酒販店も消費者」という店、つまり消費者目線をもったワインが好きな店だ。インポーターもしかり。本誌は既存誌と異なりインポーターとは距離を置いている。実税価格や店名を記載することなど、一部のインポーターからして憤慨ものだ。本誌に広告出稿いただこうが別に提灯記事など一切書かない旨の連絡もしている。そういう中、真面目で、消費者目線を持ち、ワインが好きでしょうがないといったインポーターもキチンとある。」
「すべからくそれは海外評論家がよしとするワインを全て手放しで信じるべきではないということだ。たとえばインパクトの強い、濃い酒質のワインが高得点を得、微妙なニュアンスや繊細さ、愛らしさが身上の産地のものは評価が低いという矛盾。そもそもこれは銘柄牛ステーキと平目の刺身のどちらがおいしいのか、というようなナンセンスな比較であり、優劣はない。あるのは品質の良いものが、それぞれにおいておいしいということであり、あとは単に「好み」の問題である。私達は絶対性の優劣をつけることができない異なるグルーピングのワインに対して、それぞれの良さを対等に見つけることができる可能性を持っている。」