経済的に豊かになった中国で、多くの国民がワインを飲み始めている。中国では100年以上前に国産ワインの生産が始まっているが、消費量が1990年代から年20%前後のペースで急拡大、既に日本の2倍以上という。中国ワインの発祥地である山東省煙台市で9月23日から3日間開かれた「煙台国際ワイン祭」を訪ね、中国のワイン事情を探った。
日本ではなじみが薄い中国産ワインだが、その歴史は古い。清の時代の1892年、フランスの影響を受けた中国人が煙台で「張裕ワイン」の生産を開始した。現在は「長城」「王朝」といった大手メーカーも成長し、生産量は国内全体で約70万トンとなり、世界的には10位前後だ。
なかでも「張裕」の本社がある煙台市は、国内生産の3割を占める中国最大のワイン生産基地。同市の李淑芹副市長は「ワイン産業、特に張裕は煙台の経済発展に大きな貢献を果たしている。今後は日本への輸出も期待している」と話した。
中国ではレストランだけでなく、家庭でもワインをたしなむ人が増え、国内消費も急拡大中だ。店頭での価格は、1本1千元(約1万4千円)前後から30元(約400円)程度まで幅広い。
中国最大手で世界7位の張裕集団有限公司は、昨年のワイン販売額が35億元(約490億円)で90年代から年20―30%前後伸びているという。
同社の李建君副社長は「中国では中産階級もワインを飲み始めた」と市場拡大の背景を説明。「とはいえ、まだワインを飲んだことがない中国人が大勢いる」と分析し、「高級ワインの販売を強化すれば、3年後には3倍近い販売額になる」とそろばんを弾いた。
こうした中国ワイン市場を背景に行われた「煙台国際ワイン祭」には、フランスやイタリアなど世界70カ国・地域の約500社から約5万人の業者が参加。国内外の各社のワイン試飲や華やかなアトラクションがあり、約2億ドル(約180億円)の商談がまとまった。
ワイン祭にも参加し「張裕アイスワイン」を日本に輸入する中日ビジネスサポート(福岡市)の呉暁東社長は「張裕集団は安全基準が厳しく、世界的な評価を受けている。日本でも徐々に認知度を高めていきたい」と話していた。
=2009/10/19付 西日本新聞朝刊=