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「日本ワインの新しい境地へ。アルプスワイン」(自著『最強日本ワイン完全ガイド2010』から再録) - なんでもテイスティング人生。

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「日本ワインの新しい境地へ。アルプスワイン」(自著『最強日本ワイン完全ガイド2010』から再録)

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アルプスワインの醸造家である前島良さんと、
数年ぶりにメーカーズディナーを開催することになった。

やりましょう、やりましょう、と言いながら
ずっと先延ばしになっていたので本当に楽しみ。
ワインを飲んだ皆さんの反応も楽しみ。

というわけで、先だって、自著を引っぱりだしてみた。
(これもひさしぶり。)

僕が開催していたワイン会に参加してくださった方のなかに出版社の方がいて、
それほどまでに日本ワインがお好きならと、執筆の機会をいただいた。

2010年当時というと、
石井もと子さんの「日本のワイナリーへ行こう」というガイド本こそあれ、
作り手のナマの声を届ける本はなかった(はず)。

僕自身、毎週末ワイナリーめぐりをしていて、そこで出会った
つくり手の皆さんとワインの面白さをぜひ伝えたい、伝えておきたかったので、
連日徹夜で書きまくったのを思い出す。

アルプスワインのページを開いてみる。

ワイン表現については、今となっては激しく修正したいけれど、
僕の視点は、今も変わっていない。

昔の自分に驚かされる一方で、
前島さんの根底もブレていないことに驚く。

あれから7年。

メーカーズディナーの席は、あっというまに埋まってしまった。
時代と評価が、前島さんのワインに追い付いてきた。

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日本ワインの新しい境地へ

アルプスワイン(山梨県)

 

 

 

 

自由を楽しむ、タブーなき醸造家。

あるレストランで開催されたワインメーカーズ・ディナーで、アルプスワインの醸造責任者、前島良さんは、様々なぶどう品種のワインを、客席の目の前でアサンプラージュ(=ブレンド)して見せた。 ワインを1 種類、また1種類と重ね合わせていくたびに、オリジナルのワインが織り上げられていく。いったいどんなワインが生まれるのか?とカウンター越しに首を伸ばす観客をライブで喜ばせた。「ワインをもっと自由に楽しんでもらいたい」という想いと、前島さん自身の「ワインに新しい何かを見つけたい」という情熱がひしひしと伝わってくる。

前島良さんは1975年生まれ。 山梨県立塩山高校を卒業後、勝招ワインセンターに3年間勤めたのち家業に戻り、醸造責任者として腕をふるう。「小さい頃から手伝いや仕込みをやっていたので、酸造家になると思ってましたね」。今や毎年100トンを超えるぶどうをワインにするワイナリーの大黒柱だ。

アルプスワインは勝沼から少し離れた、桃で有名な一宮地区にある。南アルプスが見えるから、というのが社名の由来。約50軒の農家をまとめ、1962年、前島福平さんにより株式会社化されて、現在のワイナリーの形となった。「小さな会社でも、一流のワインを」を合言葉に、長男は営業、妹は販売、そして次男の良さんが醸造と、3兄弟でワイン造りに取り組んでいる。2004年には「ワイン特区」の認定を受けて農地を惜り、新たにシラーやメルローの栽培を開始。醸造所から少し離れた直営ショップは、ひときわ目をひく南フランス風のオシャレなデザイン。地下は樽貯蔵庫、2階は景色の良い多目的スペースがあり、1階でワインや雑貨を販売している。

 

「おいしいワインにして届けるのが醸造家の使命」

ワイナリーを訪ねると「今日は何しに来たんスか」などと悪ぶりながら、いつも冗談で楽しませる前島さんは、金髪に龍の柄のシャツ、雪駄のスタイルで、まるで江戸っ子のよう。しかし、とても繊細な気づかいの人だ。 「ワインのことをあれこれ考えているうちに、徹夜になることもありますよ」。こうと決めたらスジを通すエネルギッシュな野心家でもある。

自然な造りのワインだからといって、無責任に手を加えない、というのはワインの造り手として怠慢だと言い切る。「複雑な味わいを狙ったがダメなワインになった、ではいけない。きちんとおいしいワインにして届けるのが造り手の使命。ぶどう作りには良い年も悪い年もあるけれど、醸造の腕でいつもおいしいワインにしてみせなければいけない」ときっぱり。環境を言い訳にしない融造家のプライド、その裏にある努力ゆえのひと言だろう。「栽培のことには、今はまだ首をつっこんでいません。自分はあくまで酸造家。あれこれやろうとすると、結局、中途半端になって、モノにならないですから」。栽培について勉強して研究することはあっても、栽培は栽培のプロフェッショナルの領域だと敬意を払っている。

もちろん栽培農家と類繁に連絡をとり合っていて、ぶどうの品質は掛け値なしだ。カベルネ・ソーヴィニヨンの収種は10月後半、国産ワインコンクールで金賞を獲ったマスカット・べ一リーAの収穫に至っては11月に入ってからという、驚くほど遅いタイミング。遅いタイミングで収權するほうが、良いワインを造るのに必要な、糖度の高い熟したぶどうを得ることができる。一方で、熟しすぎると酸味のないぶどうになったり、腐ったり病気にやられたりする危険性も高くなる。収穫を待ちたいが、どこまで待つか、という見極めは、常にワイナリーと裁培農家を悩ませる。酸造のプロと裁培のプロの、高い意識でのコラボレーションがアルプスワインの秘密のようだ。

 

 

 

 

 

「伝統」への挑戦と、「未知」への挑戦

前島さんのワイン造りからは、ぶどう品種の可能性を常識から解放してやろうという、挑戦心が伝わってくる。生み出されるワインの味わいとスタイルに共通して思い浮かぶのは、日本ワインの新しい境地が感じられる、まさに“スーパー・ ジャパニーズ”。 象徴的なのは、伝統的な日本の品種=マスカット・べ一リーAのワインと、日本ではほとんど栽培されていない品種=シラーのワインだ。

マスカット・ベーリーAでは画期的な醸造技術を認められて「文部科学大臣創意工夫功労者賞」を受賞。山梨からワイン関係では前島さんのみという快挙。マスカット・ベーリーAを低温で従来よりも長く醸すことで、品種香をきれいに抽出し、色合いを十分に抽出すると同時に、いわゆるフォクシーフレーバー(ヨーロッパなどでは一般的に歓迎されない甘いぶどうジュースのようなカラフルで華々しいにおい)を抑制して、安定化を図るノウハウが高く評価された。

しかしその製法で造ったマスカット・ベーリーAは、残念ながら、2009年の国産ワインコンクールでは、あと一歩のところで金賞を逃してしまう。コンクールの表彰会場では、いつも陽気な前島さんから笑顔が消え、目を潤ませているように見えた。「先代やワイナリーの看板に恥じないワインを造ってみせたいし、オヤジや家族を喜ばせたかった。 本当に悔しかった」。 自分の力を認めさせたいということよりも、そんな強い想いがあったのだという。同じワインを1年熟成させ、2010年のコンクールに出品。今度は見事に最高の結果である金賞&最優秀部門賞を獲得。評価がワインに追いつけなかったのだろう。表彰の壇上には、自分ではなく、父を送り出した。マスカット・べ一リーAらしさをベースに感じながらも、現代的で、エレガントな香りと、奧行きのある甘美な余韻が続くワイン。この品種を生み出した川上善兵衛がもし口にしたら、これがマスカット・ベーリーAから造られたワインなのかと、そのでき映えに目を細めたにちがいない。

 

品種の素顔を表現する

シラーについては「とても面白いが、とても難しい」という。シラーらしさが、なかなか出なかった。日本では見かけない未知の品種だけに、参考にするものもない。どうすれば品種の個性を引き出してやれるのか、毎年新しいアイデアをぶつけて挑みつづけた。初ヴィンテージの2004年のものから一度にテイスティングすると、品種本来の香りや深みが年を追うごとにしっかりと引き出されて強くなり、最新作ではシラーに典型的なスパイスの香りまでハッキリ出てきたことがわかる。 前島さんの造るシラーは確かに繊細だが、香りや味わいは重層的。味わいの広がりや深みは、必ずしも味の濃さとは単純にイコールしないことがわかるワインだ。 シラーは主に南フランスで栽培されている、赤というよりは黒紫の色合いで、エレガントで凝縮感のある品種。前島さんのイメージに近いのは、そんなフランスの北ローヌ的なエレガントなシラー、そこに、どこか日本的なニュアンスを感じさせるものだ。

誰もが知っているシャルドネも 「シャルドネ本来の味とか香りを知る機会って、あんまりないじゃないですか」と、樽の香りをつける一般的な方法ではなく、ステンレスタンクで醸造することで、品種がもともと持っている素顔の魅力をワインに表現して楽しませようとする。甲州では、珍しいスパークリングワインにもチャレンジし、新しい魅力の発見に挑む。 「ブラック・クイーンが面白いんじゃないかって思ってるんですよ。昔からある品種だけど、まだ本気で取り組んだ人って少ないじゃないですか」。古典的な品種を21世紀的な変幻自在の発想と技術で料理する。どんな新しいワインが生まれるのか、わくわくさせられる。

 

「アサンブラージュ」という自由

前島さんが頻繁に更新している mixiの日記をのぞくと、ワイン醸造の記録・・・ではなく、取り寄せラーメンがおいしかった話、ガンダムのプラモデル制作日誌、飼い描の話、家電の話、読んだ本の話など話題豊富。 バラエティーに富んだ幅広いバランス感覚が、自由なワインとワイン造りに活きている。

「単一品種のワインだけがワインじゃない」という前島さんの得意技がアサンプラージュ。しなやかで香りの華やかなマスカット・べーリーAには、カベルネ・ソーヴィニヨンを絶妙にブレンド。カベルネ・ソーヴィニヨンのタンニン分をプラスすることでワインに骨格が生まれ、長所と短所を補い合う相乗効果で、より完成度の高いワインに。アサンブラージTypeR2008と名付けられたワインは、マスカット・ベーリーAが30%、メルロー30%、シラ一30%、カベルネ10%でブレンド。山梨県産ブドウ100%なのに、なぜかスペインワインのようなセクシーな色艷が出ている。マスカット・べ一リーA、メルロー、シラをアサンブラージュしたロゼはとても複雑で、ロゼ=シンプルなワインという予想を見事に裏切ってくれる。様々な品種を重ね合わせていくことで、ソロ演奏にはない、バンド演奏ならではの味わいを生み出している。

「例えばメルローとカベルネ・ソーヴィニヨンのワインを買って、自分で混ぜて飲むつていうのもアリだと思うんですよ。白分がおいしいと思えばいいわけで。ワインを飲むのに必要なのは知識じゃないと思うんスよ」。前島さんはワインだけじゃなく、発想そのものさえアサンブラージュして楽しんでいる。発売前のワインを予約させてほしいという熱烈ファンも増えてきた。わが道を進む前島さんが、日本ワインにどんな道を切り開いていくのか、追いかけてみたくてしかたがない。

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