今年は日本ソムリエ協会の節目となる設立50周年。その幕開けとなる機関誌はソムリエ協会ならではの企画の数々で、ひときわ分厚い内容となっています。そんななか『日本ワインの新しい道。異業種参入戦略』というタイトルで、ひとつ書かせていただきました。(佐藤編集長ありがとうございました◎)
「ワインは農作物。」「ワインはブドウから。」確かにそうだと思います。ですが、そうは言っても、負荷の多い日本でのワイン造りにおいて、より良いワインを安定的につくっていく、あるいは産地として発展させていくためには、外部からの視点の共有やノウハウの転用も必要ではないでしょうか。ワイン造りの道筋は、こういうものが正しい、というものではなく、様々であって良いのではとも考えています。
今回は、他事業での実績を持ってワインづくりに挑み、クオリティの高いワインをつくっているワイナリーを訪ねさせていただきました。
長野県の安曇野ワイナリーは、真空ポンプで世界ナンバーワンを競う企業となり、その技術を生かして人工雪マシンを開発、さらにスキー観光ビジネスへ展開して、その集客ノウハウを活かした安定した経営を土台に、クオリティ向上を進めています。(醸造責任者の加藤さんは元・自衛隊員ですがとても優しい人柄◎)
山梨県のMGVsワイナリーは半導体事業からの参入。ワインづくりのプロセスを精細に因数分解し、各要素を創意工夫で改善しながら検証を重ね、トータルの品質向上を推し進めています。経営者でありながら技術者でもある松坂社長の、エビデンスに照らしながら前例にとらわれない思考と視点が、ファーストヴィンテージから素晴らしいワインを造り出しています。また、スタートダッシュ可能なベテランスタッフを布陣したことも、さすが、事業がデザインされていると感じました。(松坂社長のご実家は勝沼で、ご自身でも栽培・委託醸造をされていたほどワインづくりのDNAが◎)
持続可能な〜という言葉がありますが、その土台には、仕事に集中できる仕組み作りや、しっかりとした経営的な戦略的な視点が必要だと改めて感じましたし、日本ワインのさらなる産地化・産業化や品質向上に必要な要素であるようにも感じました。
ワインの世界のみならず、「検証するまでもなく、これはそういうものだ」と思われていることがたくさんありますが、ふと外部にある多様な考えに目や耳を向けてみることで、新しいイノベーションや効率的・効果的な手法や可能性が触発されることもあるのではないでしょうか。